営業活動の一部を外部に委託する企業が増えるなか、「営業代行」と「インサイドセールス代行」の違いを正しく理解できている担当者は意外に多くありません。両者は似た役割に見えて、委託範囲・成果指標・チーム構成・コスト構造に違いがあります。
ここでは、業務内容やKPI、活用シーンの観点から両サービスを整理し、自社の営業課題やフェーズに応じた適切な委託形態の見極め方を解説します。「アポ数を増やしたいのか」「受注まで任せたいのか」で判断は大きく変わります。外注先を検討中の企業担当者・営業責任者の方は、ぜひ参考にしてください。
インサイドセールス代行は、リード育成〜商談設定に特化した営業支援サービスです。マーケティング活動により獲得したMQL(Marketing Qualified Lead)に対して、メール・電話・Web商談などを通じて継続的にアプローチを行い、SQL(Sales Qualified Lead)へと転換していく役割を担います。
具体的には以下のような業務が該当します。
主なKPIは「SQL数」や「商談化率」であり、営業部門のパイプライン精度向上や、フィールドセールスのリソース適切化に貢献します。
営業代行は、アポ獲得から商談、クロージング、必要に応じて導入後のフォローまで、営業プロセス全体を外部委託するサービスです。インサイドセールス代行に比べて対応範囲が広く、売上や受注といった最終成果を目的とした施策設計が特徴です。
以下のような業務を含みます。
主なKPIは「受注数」「受注率」「LTV」など。提案スキルや商材理解力が求められるため、成果報酬型での運用時はパートナー選定が極めて重要です。
両者の違いを整理するうえで重要なのは、「どこまでの業務を委託するのか」「何をKPIとするのか」の点です。以下の表では、業務範囲・成果指標・費用感など、判断時に押さえておきたい主要な項目を一覧化しています。
| 比較項目 | インサイドセールス代行 | 営業代行 |
|---|---|---|
| 対応範囲 | MQL精査〜商談設定 | アポ取得〜商談〜クロージング |
| 目的 | 商談機会の創出と精度向上 | 売上・受注の最大化 |
| 主なKPI | SQL数、商談化率 | 受注件数、受注率、LTV |
| チーム構成 | オペレーター+アナリスト | IS担当+FS担当+クロージング人員 |
| 月額相場 | 20〜50万円+商談1件1〜2万円 | 50〜70万円+受注額の30〜50% |
| 向いている商材 | SaaS/低〜中価格帯 | 高単価/提案型の無形商材 |
インサイドセールス代行は、すでに一定のリードがある企業が「営業効率を上げたい」「営業とマーケを分業化したい」といった課題を抱える場面に適しています。MQLの質が高ければ、高い商談化率が期待できます。
一方で営業代行は、商談からクロージングまで担うため、営業組織が未整備な企業や、高単価・高難度の商材を扱う企業に適した手段。実際の提案スキルや顧客理解が求められるため、受注までのプロセス全体をカバーしたい企業には営業代行の方が有効といえます。
営業活動の課題は、事業フェーズによって変化します。以下は、自社の状況に応じた代表的な委託活用パターンです。
| 事業フェーズ | 主な課題 | 推奨委託モデル | 理由 |
|---|---|---|---|
| 新規事業立ち上げ期 | リード母数の不足 | インサイドセールス代行 | 市場仮説の検証と顧客接点の拡大を短期間で実施 |
| 成長期 | アポは取れるが商談が停滞 | 営業代行 | クロージング力・提案の再現性が必要 |
| 既存事業安定期 | LTVを上げたい | 営業代行(アカウント拡張型) | 導入後支援・リテンション強化に対応 |
| マーケ強化済み | SQL選別と営業の分業が必要 | インサイドセールス代行 | MQLが増えたことで商談の質と歩留まりが課題に |
どの代行モデルが適しているかは、営業組織全体がまだ立ち上がっていないのか、特定の工程だけに課題があるのかによります。すべて任せたいのか、一部だけ外注して効率を上げたいのかを明確にすることで、選定の方向性が定まりやすくなります。
また、表にあるように、インサイドセールス代行と営業代行は排他的ではなく、事業フェーズの進行にあわせて併用・切り替えが可能なことも特徴です。定量データ(MQL数・受注率等)をもとに委託範囲を柔軟に見直すことで、無駄な投資やリソースの偏りを防げます。
インサイドセールス代行は、商談前のリード育成と絞り込みに特化したサービスであり、SQL数や商談化率といった初期KPIの改善を目的としています。一方、営業代行は、商談対応からクロージング・受注後のフォローまでを担う売上創出型の委託手段であり、受注件数やLTVといった成果指標が主な評価軸。
使い分けを判断する際は、委託の目的や改善すべき指標、対応可能な社内体制、そして費用構造といった複数の観点から検討しましょう。
実働だけではなく、営業プロセスの設計と仕組み化にも強みを持つ企業を厳選。単なる人手の投入ではなく、課題の根本からアプローチできるパートナー選びにお役立てください。